倉庫を貸したい方必見!貸倉庫経営のメリット・デメリット

倉庫を所有しているが有効活用できずに困っている、相続で倉庫を引き継いだが使い道がない、といった理由で倉庫を貸したいと考える方が増えています。近年のEコマース市場の拡大により、物流施設の需要は高まっており、適切な運営を行えば安定した収益が期待できる投資として注目を集めています。

本記事では、倉庫を貸したい方に向けて、そのメリット・デメリット、注意すべきポイントなどご紹介いたします。

 

貸倉庫経営とは?基本的な仕組み

貸倉庫経営とは、所有する倉庫スペースを企業や個人に賃貸し、賃料収入を得るビジネスモデルです。住宅賃貸とは異なり、主に事業用途での利用が中心となるため、その特性を理解することが重要です。

 

貸倉庫の主な借り手と利用目的

貸倉庫の主な借り手は、多種多様な業種にわたりますが、特に以下のニーズが高いです。

  • 製造業・卸売業
    利用目的
    原材料や製品の在庫保管、季節商品の長期保管、生産ラインの中間在庫置き場。
    求める条件
    広大なスペース、搬入出のしやすさ、耐荷重性能、セキュリティ。

  • EC事業者
    利用目的
    オンライン販売商品の保管、ピッキング・梱包作業スペース、配送拠点。
    求める条件
    都市部や幹線道路からのアクセス、荷捌きスペース、高速インターネット環境、24時間利用可否。

  • 建設業
    利用目的
    建築資材、大型工具、重機の一時保管や長期保管。
    求める条件
    屋外スペースの有無、高い天井高、大型車両の乗り入れやすさ、セキュリティ。

  • 個人事業主
    利用目的
    事業用品(什器、書類、イベント用品など)、季節商品の保管、フリーランスの作業スペースの一部。
    求める条件
    小口区画、手頃な賃料、セキュリティ、アクセス性(トランクルーム型の場合)。

  • その他サービス業
    利用目的
    イベント機材、美術品、資料、季節限定商品の保管など。
    求める条件
    温度・湿度管理、防犯設備、立地によっては配送代行サービス。

 

作業着を着て悩む男性

経営形態の種類

貸倉庫経営には、規模やターゲット顧客に応じて主に以下の3つの形態があります。それぞれメリット・デメリットが異なるため、所有する倉庫の特性や目指す収益性に合わせて選択することが重要です。

1.一棟貸し(大型テナント向け)
倉庫全体を一社(またはごく少数の大手企業)に貸し出す形態です。主に物流企業や大手メーカーが大型の物流拠点として利用します。大規模な倉庫を所有しており、安定性を重視し、管理の手間を最小限に抑えたいオーナーに適しているケースです。
メリット・デメリット

  • 管理負担の軽減: テナント数が少ないため、日常的な管理業務が大幅に軽減されます。
  • 長期安定収入: 大手企業との契約は長期にわたることが多く、安定した賃料収入が見込めます。
  • 設備投資の抑制: テナントが自社のニーズに合わせて内装や設備を改修することも多く、オーナー側の初期投資を抑えられる場合があります
  • 空室時のリスク大: 一旦空室になると、賃料収入がゼロになる期間が長く、その影響も大きくなります。
  • テナント探しが困難: 大型の倉庫は借り手が見つかりにくく、募集期間が長期化する可能性があります。
  • 賃料交渉力: 大型案件のため、テナント側の交渉力が強く、坪単価を高く設定しにくい傾向があります。 

 

2.区画貸し(中型テナント向け)
倉庫内を複数の区画に分割し、それぞれ異なる企業や事業者に貸し出す形態です。中規模の倉庫を所有しており、リスクを分散しながら高めの収益を目指したいオーナーに適しています。
メリット・デメリット

  • リスク分散: 複数のテナントが入るため、一部が空室になっても賃料収入がゼロになるリスクを回避できます。
  • 高利回りの可能性: 小口に分けることで、全体として坪単価を高く設定できる場合があります。
  • 多様な需要への対応: 中小企業やEC事業者など、より幅広いニーズに対応できます。
  • 管理業務の増加: テナント数が増えるため、入居者対応や契約管理などの業務が増加します。
  • 初期改修費用: 区画を分割するための間仕切り工事や、各区画への電気・通信設備設置などの初期費用が発生します。
  • テナント間のトラブル: 共用部分の使用ルールや騒音など、テナント間のトラブルが発生する可能性があります。

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3.トランクルーム型(個人・小規模事業者向け)
倉庫をさらに小さな区画(数平方メートル〜十数平方メートル)に細分化し、個人や小規模事業者に貸し出す形態です。いわゆる「レンタル収納スペース」に該当します。比較的都市部に近い場所で、高収益を目指したいオーナー。初期投資を積極的に行える場合に適しています。
メリット・デメリット

  • 最高水準の収益性: 坪単価が非常に高く設定できるため、高い利回りが期待できます。
  • 高い需要: 個人や家庭の荷物保管ニーズは根強く、比較的高い稼働率が見込めます。
  • 短期契約対応: 月単位での契約も可能で、柔軟な利用が可能です。
  • 高額な初期投資: 細かい区画分割、セキュリティシステム、空調・換気設備など、多岐にわたる改修工事と設備投資が必要です。
  • 管理業務の複雑化: テナント数が最も多くなるため、契約管理、清掃、問い合わせ対応などの管理業務が最も煩雑になります。
  • セキュリティの徹底: 多数の不特定多数の利用者がアクセスするため、厳重なセキュリティ対策が必須です。
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倉庫を貸したい方が知るべきポイント!

ポイントを伝える画像

高い収益性への期待

貸倉庫経営は、一般的な賃貸住宅経営と比較して、その収益性の高さが大きな魅力です。
高利回りの理由としては「建物価値の減価が緩やか」「土地の有効活用」「低い運営コスト」「坪単価の高さ」「家主(オーナー様)の修繕負担が少ない」が挙げられます。

場所や形態により様々ですが、利回りの目安は下記程度になります。

  • 一棟貸し: 10〜15%程度
  • 区画貸し: 15〜25%程度
  • トランクルーム型: 25〜35%以上

※これらは表面利回りであり、税金や諸経費を差し引いた実質利回りはこれより低くなります。また、物件の立地、築年数、設備、契約形態によって大きく変動することを理解しておく必要があります。

 

初期投資を抑えられる

すでに倉庫を所有している場合、新築に比べて大幅に初期投資を抑えることができます。
新築倉庫の建設費用は、坪単価で50万円〜80万円以上かかることが一般的ですが、既存倉庫の改修であれば、坪単価換算で10万円〜30万円程度に抑えることも可能で、投資額を大幅に削減できます。

 

管理の手間が少ない

住宅賃貸では、水漏れや給湯器の故障、隣人トラブルなど、入居者からの緊急性の高い連絡が頻繁に発生しがちです。貸倉庫では、このような「生活」に密接したトラブルは少ない傾向にあります。
また、住宅賃貸では退去時の原状回復費用をめぐるトラブルが多いですが、倉庫の場合、事業用として使用されるため、賃貸借契約で原状回復の範囲が明確に定めやすいです。
大型機械設備が多い倉庫では故障リスクもありますが、一般的な保管目的の倉庫であれば、住宅ほど頻繁な設備修繕は発生しにくい傾向があります。

 

長期契約が期待できる

これは特に一棟貸しや大型の区画貸しにおいて当てはまります。企業は物流拠点を頻繁に変更することはコストも手間もかかるため、一度契約すれば長期で利用する傾向があります。
特に、製造業の在庫需要やEC市場の成長は、景気変動に比較的左右されにくいため、安定した需要が見込めます。特に生活必需品や日用品の保管需要は安定しています。
しかし、トランクルーム型は月単位の契約も多いため、このメリットが必ずしも当てはまるわけではありません。

 

注意するべきポイント

立地による制限

倉庫の需要は立地に大きく左右されるため、アクセスの悪い場所では借り手が見つかりにくい可能性があります。

特に荷物の搬入出にトラックが頻繁に利用されるため、幹線道路や高速道路インターチェンジからのアクセスが良い物件は需要が高いです(目安としてインターから5km以内)。
また、敷地への大型トラックの乗り入れやすさ、敷地内の転回スペース、荷捌きスペースの有無が重要です。
公共交通機関でのアクセスのしやすさも影響しますので、これらの条件が欠けている場合、賃料で補完したり、付加価値サービスの提供、ターゲットの変更などが必要になることもあります。

 

用途地域の制限

用途地域によっては倉庫業が制限される場合があるため、事前の確認が重要です。

貸倉庫が可能な主な地域

  • 工業専用地域: 制限なく倉庫業を営めます。
  • 工業地域: 制限なく倉庫業を営めます。
  • 準工業地域: 制限なく倉庫業を営めます。
  • 商業地域: 建築基準法で定められた範囲内で倉庫業が可能です(規模や用途に制限がある場合あり)。
  • 近隣商業地域: 商業地域と同様に、規模や用途に制限がある場合があります。
  • 準住居地域、第一種住居地域、第二種住居地域など: 原則として住居を目的とする地域ですが、一定の条件(例:床面積150㎡以下、特定の用途に供しないなど)を満たせば倉庫(自家用物置)として利用できる場合があります。ただし、営利目的の「倉庫業」は認められないことが多いです。
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事前に確認する際は「市役所の都市計画課での用途地域の確認」「建築基準法に基づく規制の確認」「消防法の要件確認」「近隣住民への影響評価」などを行なうようにしましょう。

 

空室のリスク

需要と供給のバランスによっては、長期間空室が続くリスクがあります。

空室リスクの要因としては「需給バランスの変化」「競合物件の新規参入」「経済情勢の悪化」「建物の老朽化」「賃料設定のミスマッチ」などが挙げられます。

リスクを抑えるためには下記の戦略が参考になるかと思います。

  • 複数テナント戦略
    一棟貸しよりも区画貸しやトランクルーム型を選択し、リスクを分散する。

  • 差別化戦略
    冷蔵・冷凍設備やクリーンルームなどの特殊設備や、高レベルのセキュリティシステムの導入。24時間アクセス可能な環境の提供、配送代行や物流コンサルティングなどのサービスの提供で他との差別化を図ります。

  • 予防保全の実施
    定期的な建物の点検や修繕、設備の老朽化に合わせて計画的な更新を行なう。また、外観の美観を維持し、テナントに良い印象を与えるのも効果的です。

  • 柔軟な賃料設定
    空室期間が長引く場合は、一時的な賃料割引やフリーレント期間の提供も検討する必要があります。

 

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まとめ

貸倉庫経営は、一般的な住宅賃貸と比較して高い収益性が期待できます。建物価値の減価が緩やかで土地を有効活用でき、比較的低い運営コストと高い坪単価が見込めるためです。形態にもよりますが、表面利回りとして10〜35%以上も期待できる場合があります。
また、すでに倉庫を所有している場合は、新築に比べて大幅に初期投資を抑えることができ、住宅賃貸ほど管理の手間がかからず、特に大型契約では長期契約が期待できる点もメリットです。
しかし、立地による制限や用途地域の制限、空室のリスクなど注意しなければポイントもあります。

使っていない倉庫を有効活用し、安定した収益を得るために、貸倉庫経営のメリット・デメリットを理解し、適切な戦略を立ててみてはいかがでしょうか。
今、倉庫を貸したいという方は一度ファクトリンクにご相談ください。

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