藤沢市は、湘南エリアの住宅・観光都市というイメージを持たれやすい一方、北部から西北部にかけては製造業や物流関連の事業所が集積する産業エリアが形成されています。貸倉庫・貸工場を探す際は、市全体を一括りにするのではなく、桐原町・土棚・遠藤・葛原・石川など、地域ごとの産業集積や道路条件を見ながら比較することが重要です。
2026年3月に策定された「藤沢市産業振興計画(令和8年度~令和11年度)」では、2021年経済センサスをもとに、市内の製造業は646事業所、従業者25,529人と整理されています。全産業の従業者に占める製造業の割合は15.8%で、神奈川県全体の12.4%を上回っています。製造業が藤沢市の産業を支える重要な分野であることがわかります。
さらに西北部では、「新産業の森」の整備が段階的に進められており、既存の産業集積に加えて新たな産業用地の創出も政策として位置付けられています。
この記事では、藤沢市北部・西北部の主な産業エリアを整理し、貸工場・貸倉庫を探す際にどの地域をどう比較すればよいかを解説します。
藤沢市北部に製造業が集積している理由
藤沢市の製造業は、市内全域に均等に立地しているわけではありません。特に北部の湘南台周辺から桐原町・土棚・遠藤、西北部の葛原・菖蒲沢方面には、製造業や研究開発、物流関連の事業所がまとまって立地しています。
神奈川県の都市計画資料でも、桐原工業団地を中心とする藤沢市北部の工業地について、今後も良好な工業環境の維持を図る方針が示されています。これは、藤沢市北部が現在も工業・流通業務地として重要な位置付けにあることを示しています。
また、藤沢市の最新の産業振興計画では、新産業の森での新規産業用地の創出や、市内工業系用途地域における立地可能な用地の把握、既存企業の市内再投資の支援などが掲げられています。既存の工業集積を維持するだけでなく、今後の企業立地を受け入れる環境づくりも進められています。

藤沢市北部・西北部の主な産業エリア
桐原町|桐原工業団地を中心とした既存の工業集積
桐原町には桐原工業団地があり、藤沢市北部を代表する工業エリアのひとつです。藤沢市の商工施策資料では、HDD関連、自動車部品、精密機器、製パン・製菓機械、歯車・ジャッキ、ベアリングなど、幅広い製造業の事業所が確認できます。
製造業の取引先や関連企業との距離を重視する場合、こうした既存の工業集積は立地選定の参考になります。一方、工業団地周辺であっても、貸工場・貸倉庫の設備や前面道路、ヤード、電力条件などは物件ごとに異なるため、実際の操業内容に合わせた確認が必要です。
土棚|自動車関連産業の大規模製造拠点
土棚には、いすゞ自動車藤沢工場をはじめ、自動車・車体関連の事業所が立地しています。藤沢市北部の製造業集積を考えるうえで、桐原町と並んで重要な地域です。
自動車関連や部品製造、資材保管などの事業では、周辺企業との取引関係に加え、大型車両の搬出入や道路条件が重要になります。土棚周辺で物件を探す場合は、建物条件だけでなく日々の車両動線まで確認するとよいでしょう。
遠藤|自動車関連・精密加工などの製造業集積
遠藤にも、輸送用機械器具、精密加工、熱処理、食品など多様な製造業の事業所が集積しています。2025年には、遠藤にあるプレス工業藤沢工場の事業用施設・設備等の取得について、藤沢市が企業立地等事業計画を認定しています。既存企業による再投資が現在も行われていることがわかります。
遠藤周辺で貸工場を探す場合は、既存の製造業集積との位置関係に加え、用途地域、電力、騒音・振動、搬出入ルートなどを確認することが重要です。営業所兼倉庫や製造業の保管・出荷拠点として検討する場合も、従業員や車両の動線を含めて比較するとよいでしょう。
葛原・菖蒲沢|既存製造業と「新産業の森」が重なる西北部
葛原・菖蒲沢周辺には、鍛造、機械、自動車関連、食品などの製造業が見られます。さらに葛原を中心とする西北部では、藤沢市の「新産業の森」整備事業が進められています。
このため、葛原周辺は既存の製造業集積だけでなく、新たな産業用地の形成という将来性も含めて見ておきたいエリアです。ただし、「新産業の森」は地区ごとに整備段階が異なるため、すべてが完成済みの工業団地であるかのような表現は正確ではありません。
主なエリアの特徴を比較
| エリア | 主な特徴 | 貸工場で見るポイント | 貸倉庫で見るポイント |
|---|---|---|---|
| 桐原町 | 桐原工業団地を中心とする既存工業集積 | 設備・電力・操業条件、関連企業との位置関係 | 前面道路、荷捌き、周辺事業所との動線 |
| 土棚 | 自動車・車体関連の大規模製造拠点 | 大型設備、搬出入、周辺操業環境 | 大型車進入、ヤード、配送ルート |
| 遠藤 | 自動車関連・精密加工など多様な製造業 | 用途地域、電力、騒音・振動 | 営業所兼倉庫、搬出入、駐車条件 |
| 葛原・菖蒲沢 | 既存製造業+新産業の森 | 産業用地の整備状況、操業条件 | 道路整備、物流動線、将来の周辺環境 |
「新産業の森」とは?藤沢市西北部で進む産業拠点形成
「新産業の森」は、藤沢市西北部で新たな産業拠点の形成を目指す取り組みです。藤沢市の都市マスタープランや産業振興計画では、綾瀬スマートICなどの交通機能を生かしながら、産業交流を導く新たな拠点を形成する地区として位置付けられています。
重要なのは、北部地区・第二地区・西部地区で現在の整備状況が異なることです。物件選びや企業立地の判断材料として扱う場合は、それぞれの段階を分けて理解する必要があります。
新産業の森北部地区|すでに産業系市街地の形成が進んだ地区
北部地区では、第一期整備区域が2012年度に市街化区域へ編入され、組合施行の土地区画整理事業による基盤整備が行われました。藤沢市の2026年の基本構想では、製造業を中心に企業誘致が進み、地域経済の活性化や雇用機会の拡大につながっていると整理されています。
また、第二期整備区域も2014年度に市街化区域へ編入されています。北部地区は、将来計画だけの区域ではなく、すでに産業系市街地として形成が進んでいる地区です。
新産業の森第二地区|土地区画整理事業が進行中
第二地区は、2023年度末に約8.4ヘクタールが市街化区域へ編入され、土地区画整理組合の設立が認可されました。現在は北部地区と一体となった産業系市街地の整備が進められています。
そのため、第二地区については「産業用地の整備が進んでいる」と表現するのが適切であり、完成済みの工業団地として扱うのは避けるべきです。
新産業の森西部地区|2026年3月に基本構想を策定
西部地区では、藤沢市が2026年3月に「新産業の森西部地区まちづくり基本構想」を策定しました。さらなる産業用地の創出を目指し、地域との協働によるまちづくりの検討が進められています。
基本構想では、産業ゾーンなどの考え方が示されていますが、現時点では具体的な企業立地や物件供給が確定している段階ではありません。記事では、将来の産業拠点形成に向けた取り組みとして紹介するのが正確です。

藤沢市北部で貸工場を探すときに確認したいポイント
藤沢市北部・西北部は製造業の集積がある一方、すべての物件があらゆる工場用途に適しているわけではありません。実際の操業内容に合わせて、次の項目を確認することが重要です。
用途地域・建物用途:工業系用途地域であっても、業種や作業内容によって利用条件が異なります。建物の許可用途とあわせて確認します。
電気容量・動力・キュービクル:工作機械や製造設備を使う場合は、必要な電力を確保できるか、既存設備や増設の可否を確認します。
クレーン・天井高・床荷重:重量物や大型設備を扱う場合は、クレーン能力、天井高、床荷重、柱間隔などが操業効率に影響します。
騒音・振動・臭気・操業時間:加工内容によっては周辺環境への配慮が必要です。近隣住宅や施設との位置関係も確認します。
大型車・搬入経路:資材・製品の搬出入に使う車両が、前面道路から敷地内まで無理なく進入できるかを確認します。
藤沢市北部で貸倉庫を探すときに確認したいポイント
貸倉庫では、保管面積だけでなく、日々の配送・荷役に適した物件かどうかが重要です。桐原・遠藤・葛原などでは道路条件や高速道路へのルートが異なるため、実際の配送先を想定して比較しましょう。
前面道路・トラック動線:大型車や配送車が安全に出入りできるか、道路幅、交差点、右左折のしやすさを確認します。
ヤード・荷捌きスペース:待機、荷下ろし、転回が敷地内でできるかを確認します。複数台が同時に出入りする場合は特に重要です。
搬入口・天井高・床荷重:保管品やフォークリフトの使用を想定し、シャッター寸法、天井高、床荷重などを確認します。
駐車場・営業所機能:営業所兼倉庫として使う場合は、従業員・営業車・来客用駐車場の確保も確認します。
災害リスク:洪水・内水・土砂災害などのハザード情報は物件単位で確認し、保管品や設備への影響を想定します。
桐原・遠藤・葛原は「どこが一番良いか」ではなく用途で選ぶ
藤沢市北部・西北部で物件を探す場合、特定の地域がすべての企業に最適というわけではありません。既存の工業集積や取引先との距離を重視するなら桐原町・土棚、製造業の多様な集積や営業所機能も含めて検討するなら遠藤、将来の産業拠点形成も視野に入れるなら葛原・菖蒲沢周辺など、事業内容によって評価軸は変わります。
また、同じ地域内でも物件ごとに用途地域、道路条件、設備、賃料、敷地形状は異なります。エリアのイメージだけで決めず、実際の配送・操業フローに合うかを物件単位で比較することが大切です。
まずは藤沢市の貸倉庫・貸工場を比較する
そこナビでは、藤沢市内の貸倉庫・貸工場を一覧で確認できます。桐原町、遠藤、葛原、石川など北部・西北部の物件も掲載されるため、今回紹介した産業エリアの特徴と照らし合わせながら比較できます。
物件数や募集状況は随時変わるため、記事内の地域情報を参考にしつつ、最新の募集条件を確認してください。
まとめ
藤沢市は、湘南エリアの住宅・観光都市という側面だけでなく、北部・西北部に製造業や物流関連の産業集積を持つ都市です。桐原町には桐原工業団地、土棚には自動車関連の大規模製造拠点、遠藤には多様な製造業、葛原・菖蒲沢周辺には既存産業と「新産業の森」の取り組みがあります。
また、2026年3月に策定された最新の産業振興計画では、新産業の森での新規産業用地の創出や既存企業の再投資支援などが位置付けられています。北部・西北部は、既存の産業集積と今後の産業拠点形成の両方を見ながら物件を比較できる地域です。
一方、貸工場では用途・設備・操業条件、貸倉庫では大型車両・荷捌き・ヤードなど、実際の利用条件を確認する必要があります。藤沢市で貸倉庫・貸工場を探す際は、地域の特徴と物件ごとの条件を組み合わせて比較することが重要です。
